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犬のダニ にどう対処する? ダニの原因、犬への影響、治療法とは?

公開日
更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
犬にダニがついていたら驚いてしまいますね。ダニ類は皮膚や体表に寄生する外部寄生虫です。主にマダニ類、毛包虫類、ツメダニ類、ヒゼンダニ類などが知られています。ダニが寄生してしまった時の対処法や治療法などはダニの種類によって様々です。それぞれの感染症について、 犬のダニ の症状や治療法などをご紹介したいと思います。
 
 

犬のダニ :ダニの原因は?

犬にダニがついてしまう原因は、他の犬や動物との接触によって感染する可能性と、散歩などで草むらに入り、そこで生息するダニに感染してしまう可能性が考えられます。特に暖かい季節にはダニが増殖します。
 
 

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犬のダニ :犬の健康への影響

マダニ感染症

マダニが犬の皮膚に寄生し、吸血すると犬のカラダにかゆみが生じます。犬の爪の間に寄生した場合には歩行困難になる場合があります。診断は寄生しているマダニを検出できるかどうかです。
 
ダニの一種であるマダニは、他のダニと同様に、頭部と腹部からなり、大人のダニは8本足です。ダニは、特定の動物に寄生する宿主特異性という性質をもっています。マダニには多くの種類があり、犬に頻繁に寄生するものとして以下があります。

  • ・ツリガネチマダニ
  • ・キチマダニ
  • ・フタトゲチマダニ
  • ・クリイロコイタマダニ

 
マダニは犬に寄生すると吸血と脱皮を繰り返して生命を維持します。マダニの中には病原体を保有し、吸血の際宿主に感染させる場合があります。
 

毛包虫症

ニキビダニの寄生によって起こる犬の疾患です。通常、犬にニキビダニが寄生しても症状が出ることはあまりありません。しかし、幼齢の犬や、免疫力が低下している犬では、口や眼の周囲、顔、四肢の先端に脱毛が起こり、全身に広がっていきます。細菌の二次感染により化膿、出血、浮腫などの病態を示し、重症例では死に至るケースもあります。
 
 

ツメダニ感染症

ツメダニ感染症の場合、幼齢の犬では著しい症状を呈しますが、成犬になると発症に至らないケースがほとんどです。犬の落屑(ふけ)が多くなり、脱毛がみられることがあります。激しいかゆみをともないます。診断はツメダニを検出できるかどうかです。
 
 

疥癬

ヒゼンダニ類による犬の皮膚疾患です。激しいかゆみとともに全身に病変が広がっていきます。診断は病変部からダニを検出します。
 
 

耳ヒゼンダニ感染症

耳ヒゼンダニが犬の外耳道に寄生することで起こります。外耳炎のような症状とともに耳を痒がり、黒い耳垢がみられます。診断はダニの検出です。
 
 

犬のダニ:対応法は?

犬にダニが寄生しているのを発見した場合、皮膚に異常が見られなければ、シャンプーして駆虫薬を使用して様子を見ましょう。ダニが犬の皮膚にくっついている場合、無理やり取ると皮膚にダメージを負わせる可能性があります。シャンプーと駆虫薬で取りきれなかった場合には病院へ行きましょう。
また、犬の皮膚に異常が見られたり(赤くなっていたり、湿疹が出来ているなど)ひどくかゆがっている場合には病院で対処してもらった方が得策です。(なお猫の皮膚に生じる疾患については、「猫の皮膚病ってどんなもの?」をご覧ください。)
マダニ類、ツメダニ類、ヒゼンダニ類は人間にも感染します。それを防ぐためにも早急に感染した犬を治療する必要があります。また、飼育環境や共通の生活環境を清潔にし、複数飼育している場合には、他の犬や動物に感染しないように隔離するのもいいでしょう。
 
 

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犬のダニ:治療法は?

マダニ感染症の治療法

マダニの数が少ない場合には個々のマダニをピンセットなどで除去しますが、顎の部分が残ってしまう事があるので、獣医師に行ってもらう方がいいでしょう。通常は駆虫薬を用います。
 
 

毛包虫症の治療法

ニキビダニは駆虫薬で治療を試みますが、完治は難しく、投薬は長期間に及びます。症状が軽減すれば常在しているダニとしてとらえ、共存してもいいでしょう。人への寄生はしません。再発防止のために飼育環境の清浄化や、免疫状態をよく保つためにバランスのいい食餌、ストレスを与えない事などを心がけます。
 
 

ツメダニ感染症の治療法

駆虫薬で駆除します。
 
 

疥癬の治療法

駆虫薬で駆除します。ダニの卵まで駆除するために1週間から10日間くらいの間隔で犬に対する投薬を繰り返します。人に寄生してかゆみを生じさせることがあります。
 
 

耳ヒゼンダニ感染症の治療法

駆虫薬を耳に垂らしたり、経口投与したり、皮下注射したりします。ダニの卵まで駆除するために1週間から10日間くらいの間隔で投薬を繰り返します。人への感染は報告されていません。
 
 

犬ダニに人がかまれたら

 
愛犬にダニがついてしまったとき、自分にも影響はないのだろうかと誰もが一度は思うのではないでしょうか?ドラッグストアに行けば様々なダニ駆除用の品物が売っています。ダニは生活の中でいろいろな所に生息していて、身近な所だと、ふとんなどにいるダニは人間にとって呼吸器症状などを発生させるアレルギー物質として有名です。また、痒いと思って患部をみると蚊に刺されたときとは違う紅斑が出来ているとき、それはダニによるものかもしれません。それらは、犬のダニではなく、我々人間の生活内に潜む他の種類のダニです。
 
このように、ダニにも実はかなりの種類が存在します。ダニなどの寄生虫や、他には細菌、ウイルスなどこのような感染症の原因には宿主特異性というものが存在します。宿主特異性というのは、簡単に言うと好んで特定の種にだけ寄生する(感染する)ということです。宿主特異性が高いダニは、犬が好きなら犬にしか寄生しません。しかし、宿主特異性が低いダニは、犬にも猫にも人間にも寄生します。どのダニがどの動物に寄生するかというのはそのダニの種類によりますので、一つ一つ見て行かなくてはなりません。
 
しかし、その宿主特異性があるため、全てのダニが犬に寄生するわけではないのです。逆に言うと、犬に寄生するダニは限られています。犬に寄生する代表的なダニは以下の物です。
 

  • マダニ類:ツリガネチマダニ、クリイロコイタマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ
  • ニキビダニ科:イヌニキビダニ
  • ツメダニ類:イヌツメダニ
  • ヒゼンダニ科:穿孔ヒゼンダニ

 
マダニ類は犬に寄生するものに限らず、一時的に人間に寄生し、刺咬症を起こすことがあります。また、他の病原体を媒介することもあるので、他の病気になる可能性があります。稀にダニ麻痺という症状を起こすことがあります。
 
イヌニキビダニは宿主特異性が高く、人に感染することはありません。
 
イヌツメダニは人間へ感染し、激しい痒みや皮疹など皮膚病変を起こします。
 
犬の穿孔ヒゼンダニは人へ感染し、激しい痒みと持続する丘疹性皮疹の発生が見られます。
 
このように、マダニ類、イヌツメダニ、犬の穿孔ヒゼンダニはダニ刺咬症を引き起こします。症状は刺咬部に紅斑、掻痒性皮疹が現れます。注意しなければならないことは、爪等で掻きむしらない事です。患部を掻くことで、細菌の2次感染などが起きると症状はひどくなり、とびひを起こしたりします。
 
その他、稀にマダニ類によりダニ麻痺が見られます。これは刺咬症のようにダニに感染すると全ての人や動物にみられる症状ではなく、感受性の強い個体にだけ見られる症状です。ダニに咬まれたときに注入されるダニの唾液中の末梢神経毒によるもので、徐々に麻痺が見られるようになります。
 

ダニ媒介性疾患

多くのマダニはウイルス、リケッチア、細菌、原虫など多くの病原体を媒介します。ダニに咬まれたときに、ダニの体内にあるこれらの病原体が宿主の体内に入ることにより感染します。以下に犬のダニによって媒介される代表的な疾患を挙げました。
 
紅斑熱はリケッチアの感染により起こります。人では発熱し、発疹が全身に見られ、発疹は出血することもあります。ほとんどの感染者にダニの咬傷部位に刺し口が見られます。
 
野兎病は野兎病菌の感染によって起こります。人では3~4日の潜伏期を経て発熱、関節痛が起こり、リンパ節が張れます。様々な病型があり、日本ではリンパ節型、潰瘍リンパ節型が多く、その他、チフス型、肺炎型、胃腸型、眼リンパ型、扁桃リンパ節型などがあります。
 
ライム病はスピロヘータ属の細菌によって起こります。人では咬傷部を囲んで紅斑が現れ、次第に拡大していきます。稀に神経症状(運動機能障害、髄膜炎)を起こす例があります。
 

人の症状に対しての治療は?

ダニ刺咬症は患部の痒みと炎症を抑えるために、ステロイド系の軟膏を用います。症状がひどくない場合には市販のかゆみ止めを用いても良いでしょう。薬局で薬剤師さんに患部を見せて、薬を選んでもらうと安心です。ステロイド系、非ステロイド系、抗ヒスタミン系などいろいろありますので、自分で購入するときには注意が必要です。掻きむしって、膿が出来てしまっていると、細菌感染を起こしています。この場合には抗生物質入りがいいですが、ここまで症状が悪化している場合には皮膚科を受診した方がいいでしょう。
 
ダニ麻痺は早期に寄生ダニを除去すれば速やかに回復しますが、ダニを除去しても麻痺が進行することもあります。もし、足などに麻痺が生じたら、まさか原因がダニに咬まれたことだと思う人はあまりいないでしょう。神経科や整形外科などを受診すると思います。大切なことはダニを除去しておくことです。麻痺が残る場合には、治療に免疫血清が用いられるケースもあります。
 
ダニ媒介性疾患は媒介された原因病原体に対する抗生物質投与で治療を行います。紅斑熱はテトラサイクリン系の抗生物質、野兎病はアミノグリコシド系、特に硫酸ストレプトマイシンが有効です。ライム病はテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アモキシシリン、ベニシリン、エリスロマイシンが有効です。
 

予防法は

一番の予防は犬にダニがつかないようにすることです。ダニ感染防止薬がありますので、計画的に長期に渡り用いることが、簡単な方法です。その他ダニが付きそうな草むらなどに入らないようにしましょう。毎日のブラッシングや定期的なシャンプーなどで体表を観察したり、清潔に保つことも重要です。免疫力を保つために食餌で栄養をしっかり摂ることも忘れないで下さい。
 
もし犬にダニがついてしまったら、速やかに病院へ行き、ダニの除去に努めましょう。人への感染は接触感染です。感染した犬やダニで汚染した器物・環境に直接触れないように手袋をするなど工夫して清潔にしましょう。犬の体のみならず、生活環境に殺虫剤を使用するのも有効です。その場合には、犬に害がない薬品を選ばなければならないので、獣医師と相談してみて下さい。
 

犬ダニ用の薬→犬用、人用について、どんな薬なのか、服用時のそれぞれの注意事項

犬ダニ用の薬は、犬用と人用では違います。犬は全身が被毛で覆われているのに対し、人は皮膚がむき出しになっています。従って、犬は寄生しているダニを見つけるのが人より難しいという特徴があります。人は体に寄生しているダニの除去は簡単なので、症状に対しての薬が主なものですが、犬は殺ダニ剤が重要になります。ダニを完全に除去することが出来なければ、皮膚疾患は継続するからです。
 
ステロイド剤は、その抗炎症作用により、痒み、痛み、張れ、熱感などが抑制されます。しかし、炎症反応を止めるだけで、起因物質(この場合、ダニ)に対しては何の作用も示しません。また、副作用として防御反応が失われるので、感染症などの場合には症状が進行してしまいます。従って、ダニを完全に除去できる人に対して用いることが出来る薬剤です。犬に対しても、ダニが完全に除去できていれば用いることも出来ますが、ニキビダニ症やヒゼンダニ症の場合には完全に除去することが難しいので、犬に対してのステロイド剤は基本的には禁忌です。
 
犬には殺ダニ剤(殺虫剤)が用いられます。殺虫剤には有機リン系、カルバメート系、ピレスロイド系など様々な種類があり、またそれぞれについて、使用剤型に種類があります。ノミ取り首輪には粉剤や水溶液、体表には粉剤、油剤、乳剤、経口投与には錠剤などを用い、薬浴も効果があります。ツメダニの除去は殺ダニ剤で簡単に行うことができます。注意すべき点は殺虫剤は高等動物に対しても毒性があるということです。中毒に気を付けなければなりません。
 
また、イベルメクチン投与が有効です。イベツメクチンはダニが経口摂取することで死滅するので、真皮や皮下組織を食べるヒゼンダニに特に効果があります。吸血するマダニなどにも有効です。
 
このように、犬は病変に対しての治療はあまり行わないので、皮膚を保護するために保湿を行ったり、栄養状態をよく保ち免疫力を高めるということが大切になってきます。ダニの完全除去が難しいニキビダニやヒゼンダニは幼犬の頃の感受性が強く、3歳くらいになると感受性が弱くなり自然に治るので、それを待つという方法がとられます。
 
犬と人では用いる薬も治療方法も異なるので、犬は獣医師に、飼い主さんは人間の医師に従うことが重要です。獣医師に言われたことを自分に当てはめたり、人間の医師に言われたことを犬に当てはめて、独自で治療を行わないようにしましょう。
 
 

普段の生活での留意点

犬を連れて、ダニがいそうな草むらに入らないことや、ダニが寄生していると分かっている他の犬や動物との接触を避けることは大切です。またダニやノミなどの寄生虫を駆除する薬もあります。市販されているものや動物病院で購入できるものを予防として用いることをお勧めします。
 
日頃からできることとしては、シャンプーやブラッシングなどで犬の被毛や皮膚を清潔に保ち、状態を観察することです。
 
シャンプーにもいろいろ種類がありますので、獣医師に相談してみて下さい。ダニは湿気を好みますのでシャンプー後は完全に乾かすように心がけて下さい。外耳道に寄生する耳ヒゼンダニは黒い耳垢の中に白い点として見られることがあります。犬の耳掃除のときに、普段から耳垢の量や色、匂いなども観察しておくといいでしょう。外耳や鼓膜を傷づけてしまう可能性があるので、やりすぎに気を付けて下さい。
 
また、免疫力を維持するために、規則正しい生活やバランスのいい食餌、ストレスを与えないなど基本的なことがとても大切になります。
 
 

まとめ

ここまで説明した内容のポイントを以下に記載致しますので、ご参考にして頂ければ幸いです。
 

  • ・ダニがついてしまうのは、他の犬や動物との接触や散歩などで草むらに入った場合等が考えられる。
  • ・ダニによる犬の病気としては、マダニ感染症、毛包虫症、ツメダニ感染症、耳ヒゼンダニ感染症等がある。
  • ・対応策としては、シャンプーと駆虫薬があるが、皮膚に異常のある場合は受診する方が得策。
  • ・治療法としては夫々の病気によって異なる。
  • ・犬を連れて草むらに入らない、他の犬や動物と接触を避ける、シャンプーやブラッシングで犬の毛や皮膚を清潔に保つなどを心がける。
  • ・また、ダニは湿気を好むので、シャンプーのあと完全に乾かすことにも留意。

 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。
 
 

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